大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)137号 判決

一 控訴人が、昭和五〇年三月一〇日、被控訴人に対し、控訴人が被控訴人に賃貸していた控訴人の所有にかかる原判決別紙目録記載の建物(以下本件建物という。)につき、賃料不払による賃貸借契約の解除及び正当事由による賃貸借契約の解約を原因として明渡を求める訴(以下、「前訴」という。)を、神奈川簡易裁判所に同庁昭和五〇年(ハ)第三二号家屋明渡等請求事件として提起したが、昭和五一年八月二〇日に請求棄却の判決の言渡を受け、同月二五日横浜地方裁判所に同庁同年(レ)第四四号建物明渡等請求控訴事件として控訴を提起し、その控訴審係属中の昭和五二年二月二四日、横浜地方裁判所が、控訴人を債権者とし被控訴人を債務者とする同庁同年(ヨ)第一六四号仮処分命令申請事件について、右明渡請求権保全のため「債務者の本件建物に対する占有を解いて、横浜地方裁判所執行官にその保管を命ずる。執行官は債務者にその使用を許さなければならない。ただし、この場合においては、執行官はその保管にかかることを公示するため適当の方法をとるべく、債務者はこの占有を他人に移転し、または占有名義を変更してはならない。」との仮処分決定をなしたこと、前記控訴事件については同年三月三〇日に控訴棄却の判決の言渡があり、次いで、控訴人は同年四月一日東京高等裁判所に同庁同年(ツ)第三六号事件として上告したが同年五月二五日に上告棄却の判決の言渡を受けたこと、その後控訴人が被控訴人に対し、再び神奈川簡易裁判所に本件建物の所有権に基づき同建物の明渡を求める訴(以下「後訴」という。)を提起し、同庁昭和五三年(ハ)第九四号事件として係属中であることは、いずれも当事者間に争いがない。

二 以上の事実によれば、本件仮処分命令申請事件の被保全権利は本件建物の明渡請求権であり、控訴人は前訴をその本案訴訟として追行し、右被保全権利の存在を否定する判決が確定したものである。したがって、その後控訴人の提起した後訴は、その性質上右仮処分の本案訴訟たりうるものであったとしても、控訴人が選択した本案訴訟(前訴)が右のとおり確定した以上、後訴のために右仮処分の効力が維持されるべきものと解することはできない。

なお、かりに右後訴が本件仮処分の本案訴訟となるとしても、後訴においては、被控訴人は本件建物に対する賃借権を主張して控訴人に対抗することは明らかであり、既に確定した前訴の既判力により右抗弁が容認され、控訴人の請求は棄却される蓋然性が極めて高いものといわなければならず、後訴における明渡請求権保全のため本件仮処分決定を維持すべき必要は認められない。以上のとおりであるから本件仮処分決定は、その本案訴訟である前訴につき控訴人敗訴の判決が確定したことにより事情が変更したものとして取消すのが相当である。

(外山 清水 鬼頭)

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